免許も不要!?電動一輪車・セグウェイが公道を走れる日は現実になります。

記事

以前に紹介した記事にて、現在の日本では、なぜ電動一輪車・セグウェイが日本の公道を走行すると
違法になるのかについて解説をしました。

電動一輪車・セグウェイが公道走行を禁止されている理由

ですが現在、多様な交通主体の交通ルールの在り方として、電動キックボードを始めとした
パーソナルモビリティや、自動運転車輛に関する法の規制緩和の動きが本格化しており、
近い将来、電動一輪車・セグウェイが公道を走ることができる可能性があることも紹介しました。

そしてこれらが実現するのはほぼ間違いないと考えています。

今回は、警察庁で開催されている有識者検討会の内容から、
電動一輪車・セグウェイが本当に公道を走行できるようになるのか、
またその際の条件は一体どのようなものになるのかを一緒に見ていきたいと思います。

有識者会議

行政庁が行うべき意思決定の際に、多数の有識者から様々な意見を聴取し、
意思決定の内容をより専門的かつ公平にするために行われる会議のことです。

有識者は各部門のエキスパートや、専門性の高い学識経験者などが選出されています。

多様な交通主体の交通ルールの在り方に関する有識者検討会

電動一輪車・セグウェイが公道を走れるか否かについて議論されている有識者会議は、
多様な交通主体の交通ルールの在り方に関する有識者検討会として警察庁・交通局が主催しています。

検討会の概要や議事録はすべて警察庁交通局のHPで確認することができますので、
更に興味のある方は一度目を通してみてください。

警察庁HP・交通局有識者会議

開催趣旨

この検討会の開催趣旨について、内容を見ていきましょう。

近年、技術の進展等により、立ち乗り電動スクーター、自動配送ロボット等の多様なモビリティが登場しており、海外の一部の国では、それらが新が移動・運送手段として活用され始めている現状にある。また、我が国においても、これらの新たなモビリティの更なる活用を目指して各地で実証実験が行われているところであり、例えば、立ち乗り電動スクーターについては、昨年10月、生産性向上特別措置法に基づいた新技術等実証実験が認定され、シェアリング事業の実施に向けた走行実証が行われたほか、本年5月には、低速・小型の自動配送ロボットの公道走行実験について具体的に検討を進めるように、内閣総理大臣から指示があったところである。

一方、このような新たなモビリティについては、我が国の既存の交通ルールの下では十分にその性能や利便性を生かすことができない可能性が指摘されている現状にあり、交通ルール等の在り方の見直しを求められている状況にある。

そもそも、道路という限られた交通空間では様々な交通主体が通行するため、ある交通主体にとっては利便性・安全性を向上につながるルールの変更が、他の交通主体にとっては利便性・安全性の低下をもたらすことも十分にあり得る。そのため、交通ルールは、歩行者や車両などの多様な交通主体のすべてにとっての道路における安全性と快適性の調和の上に確率されるものでなければならない。

したがって、新たなモビリティに係る交通ルールの検討にあたっては、それのみに着目して行うのではなく、他の交通主体を含めた多様な交通主体すべての安全かつ快適な通行を可能とするものとなるよう、新たなモビリティ以外の交通主体に係る既存のルールを変更することも視野に入れ、多角的・体系的に検討する必要がある。もっとも、交通ルールの見直しに当たっては、それが国民生活全体に影響の及ぶ事柄であり、かつ、既存のルールが国民に幅広く定着しているという事実も考慮し、我が国において十分な社会的理解・合意が得られるか否かを踏まえて検討する必要がある。

以上の趣旨を踏まえ、本有識者会議は、警察庁交通局において、新たなモビリティに係る安全性や利便性について詳細に分析するとともに、専門家の意見を聞きながら、多様な交通主体全てにとっての新たな交通ルールの在り方を幅広く検討するために開催するものである。

引用:多様な交通主体の交通ルールの在り方に対する有識者検討会開催趣旨書
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/council/mobility/0702-4.pdf

少し長いので、要約してみると以下のようなところでしょうか。

  • 電動キックボードや自動配送車は海外ではすでに活用され始めていている。
  • 日本は実証実験などが開始されもしたし、総理大臣からも推進支持があった。
  • 新たなモビリティは、今の交通ルールでは利点を生かせないのは知っている。
  • 今の交通ルールを見直したいが、これまでの交通手段に負の影響もでる。
  • 新たなモビリティ、これまでの交通手段、そして国民全てが納得するような
    落としどころを見つけたい。

モビリティの推進だけを優先しないということは、文面からみてもわかります。

ですが、パーソナルモビリティ事業を経済戦略として推進させる必要がある以上、
規制を緩和する(せざる負えない)方向に話が進むことは確実でしょう。

検討会構成員

検討会の構成員は以下のリンクから確認することができます。

多様な交通主体の交通ルールの在り方に対する有識者検討会構成員

中間報告内容

令和3年12月に行われた最新の検討会の報告内容から、新たなモビリティに関する公道走行実現化について
現状ではどこまで進展があったのかを見ていくことにしましょう。

ここで、新たなモビリティとして挙げられているのは、電動一輪車・セグウェイだけではなく、
今後公道を走行する可能性があるモビリティのいくつかに主題を置いて議論を行っているようです。

検討されている新たなモビリティは以下のようなものになります。

  • 電動キックボード
  • 搭乗型移動支援ロボット・電動車椅子
  • 自動配送ロボット
  • 状態が変化するモビリティ
  • 超小型モビリティ・ミニカー

電動一輪車・セグウェイは搭乗型移動支援ロボットに該当します。

中間報告の内容を確認していくにあたって、電動一輪車・セグウェイに関係する、
搭乗型移動支援ロボットに関する項目だけをピックアップしたいと思います。

報告書概要

出典:https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/council/saisyugaiyou.pdf

報告書概要は以下のリンクから確認することができます。

多様な交通主体の交通ルール等の在り方に関する有識者検討会 報告書概要

報告書の要点だけまとめられた報告書概要から、現時点で電動一輪車・セグウェイがどのように
判断されたのかをみていきたいと思います。

車輛区分

出典: https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/council/saisyugaiyou.pdf

この内容からまず最初にわかるのは、
電動一輪車・セグウェイが公道を走ることを前提に検討が進んでいるということです。

これまで、電動一輪車・セグウェイが公道を走行できない理由として、

  • 物理ブレーキを取り付けることができない。
  • 保安器具を満たしていない(サドルが付いていない)

ということが一番の障害となっていましたが、開催趣旨に示されている「我が国の既存の交通ルールでは
十分にその性能や利便性を生かすことができない」という指摘を受けて止めて、

これらのナンセンスなこじつけ・法律に基づいた考えは最初から考慮していないことが伺えます。

電動一輪車・セグウェイは②と③のどちらかに当てはまるかは、これ以降の検討事項になると思いますが、
最高速度をアプリで管理することができる電動一輪車は、
②と③どちらにも対応して運用することが可能であると言えます。

例として、小径ホイールであるninebot one S2やINMOTION V5Fであれば、そのまま②に該当し、

  • 車道
  • 普通自転車専用通行帯
  • 自転車専用道

を通行することができるようになると思いますし、
速度制限を行うことで、歩道も安全に走行することができると思います。

ninebot one S2 最高時速24km/h(アプリで調整が可能)

ninebot one S2レビュー

その際にも、モビリティとしては極小スペースしかない車輛であるため、
歩行者とすれ違いをしてもお互いに与えるストレスは小さいと考えられます。

小径ホイール:INMOTION V5FとKINGSONG KS-14D

INMOTION V5Fレビュー

KINGSONG KS-14Dレビュー

20km/hを超える、中~大型ホイールの場合、例えばINMOTION V10FやKINGSONG KS-S18といった
車輛であれば、車と同じように

  • 車道

を走行することができるようになります。

ただ、免許が必要となる場合にどの区分の免許になるのか、
または教習所での講習などが必要になるのか等は、これ以降の検討事項のようです。

KINGSONG KS-S18 最高時速50km/h 原動機付自転車免許ならばハードルは大幅に下がる。

INMOTION V10Fレビュー

KINGSONG KS-S18レビュー

小型低速車

出典: 出典: https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/council/saisyugaiyou.pdf

小型低速車についてもう少し見ていきましょう。

  • 立ち乗りでも座り乗りでもよい

という文言は画期的で、立ち乗りを基本とする電動一輪車の利便性・コンパクトさを失わないために、
規制緩和する際には必須の検討事項です。

次に、(2)の運転することができる者についてです。

年齢制限は設けられる可能性はあるものの、免許の必要性は認められない、すなわち
公道を走るのに免許は不要であると結論付けています。

年齢制限は今のところ、16歳以上である必要があるとの検討がなされています(後述)。

さらに、「小型低速車の販売」云々という文面から、運用はシェアリングサービスに限る場合ではなく、
自らが購入した車輛が対象になるということです。

すなわち、特定の電動一輪車が小型低速車として認められた場合には、

電動一輪車を自らで購入して、免許を必要とせず、
自転車と同程度の速度15~20km/hで公道を走行できるようになる。ということになるでしょう。

これが実現するだけでも、普段の生活における利便性は格段に上昇します。

ちょっと近くのコンビニに買い物、といった場合などに最適です。


報告書(詳細)

ここまでは検討会での報告書の概要について見てきましたが、
報告書には検討内容の詳細がまとめられています。

以下のリンクより確認することができます。

多様な交通主体の交通ルール等の在り方に関する有識者検討会 報告書

この中から、電動一輪車・セグウェイの検討結果に関係する注目すべき項目を
いくつかピックアップしてみたいと思います。

現行法による位置づけ

立ち乗りをすることができる構造の搭乗型移動支援ロボットについては、「身体障害者用の車椅子」に該当しないため、その多く※が、道路交通法上は電動機付自転車に、道路運送車両法上は第一種原動機付自転車に区分される。

※車体の大きさや原動機の大きさによっては、道路交通法上の普通自動車等や、道路運送車両上の軽自動車などに分類される車輛も想定され得る。

引用:多様な交通主体の交通ルールの在り方に対する有識者検討会報告書
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/council/saisyuhoukokusyo.pdf

これが、電動一輪車が法律上では軽自動車に当たると言われる理由になります。

以前の記事にも記載しましたが、法の範疇を既に超えている電動一輪車を
現行法で規定すること自体がナンセンスであり、ここに現行法の限界を見ることができます。

電動一輪車・セグウェイが公道走行を禁止されている理由

委員の主な意見

搭乗型移動支援ロボット・電動車椅子

(共通)

・車体が一定の大きさに収まるモビリティについて、立ち乗り又は座り乗りで扱いに差を設ける必要はない。

・立ち乗り方のモビリティを想定すると、現行法令上の身体障害者用の車椅子に係る高さの制限よりも緩和した基準とするべき。

・速度などが歩行者の能力を超えない限りにおいて、交通ルールを歩行者と同様に扱うこととし、免許もヘルメットも不要とするのが、整理しやすい考え方なのではないか。

・周囲の歩行者が恐怖を感じない速度であることが重要。

・歩道などを通行するモビリティについては、歩行者と同程度の時速6kmが上限などではないか。

・歩行者と同程度にするべきであるが、歩行者もランニング時などに時速6km以上で歩道を通行する場合があることを考えると、速度を上げることを議論してもよいのではないか。

・公道実証実験の際、周囲の歩行者からアンケートを取っていいただきたい。

引用:多様な交通主体の交通ルールの在り方に対する有識者検討会報告書
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/council/saisyuhoukokusyo.pdf

意見の論点が、歩行者と同等の、歩道を走行することについての議論が中心となっているようですが、
既にwalkcarは立ち乗りでありながら、時速10㎞で歩道を走行することが可能です。

walkcarで歩道・公道を走行した感想

現在の電動一輪車・セグウェイの位置づけは、電動車椅子などの
介護用ロボットとはすでに一線を画した仕様・用途になっている為、

実際の車道走行に関する議論や、免許・自賠責保険・講習の有無に関する内容など、
もっと実用的な議論をしてほしいと思います。

残念なことに、現在の電動一輪車・セグウェイがいかに小型・高速・長距離・安定性を備えた
モビリティに進化していることを、委員自体がご存じでないのかと思われます。

(電動一輪車がパーソナルモビリティにおける覇権となる10の理由)

日本がパーソナルモビリティ分野において後進国である理由がここにもあります。

各論

搭乗型移動支援ロボットに関する各論を抜粋しましたが、
長文となっている為、下記については太字以外は軽く読み飛ばして頂いてもかまいません。

電動キックボードや一部の搭乗型移動支援ロボット等(小型低速車)

電動キックボードは、一般的な原動機付自転車等と同じく、原動機を用いて運転するものであり、ペダル又はハンド・クランクを用い、かつ、人の力により運転する自転車とは、その性質を異にするものである。

一方で、最高速度が一般的な自転車利用者の速度(時速15~20km)と同程度に抑えられており、かつ、その車体の大きさも普通自転車と同等なものも実用化されている。こうした電動キックボードについては、原動機付自転車の一類型に位置付けた上で、その速度や大きさを踏まえ、原動機付自転車の交通ルールをそのまま適用するのではなく、自転車と酷似の交通ルールを適用することは可能であると考えられる。

具体的には、下記の点については小型低速車が原動機を用いて運転するものではあるものの、低速で小型の車であることを踏まえ、独自のルールを設けることが適当である。

① 運転することができる者

…小型低速車の多くは、現行の道路交通法においては原動機付自転車に該当することとなり、運転する為には原付免許又はその上位免許を受けている必要がある。原付免許を受けることができるものについて16歳以上とされているのは、一定の精神的な成熟性を必要としているからであり、電動キックボードをはじめとする小型低速車の運転に際しても同様とすべきである。そこで、小型低速車を運転する者についても同様の年齢制限を設けることとし、その上で一定の安全教育を受けることとすることが適当である。

② 通行することができる場所

小型低速車に該当する車輛は、現行法では車道しか通行することができないとされているものの、その最高速度や、車体の大きさを踏まえると(略)普通自転車専用通行帯及び自転車道についても、普通自転車と同等に通行しても差し支えないと考えられる。

一方で、歩道の通行については、本有識者検討会においても賛否両論であったが、「歩道は、歩行者の通行の安全を確保するための空間であり、車輛は高速で通行してはならない」という点では一致していた。また、電動キックボードに係る海外の法制度を見ても、多くの国において歩道における通行は禁止されている。

これらを踏まえ、原則として、小型低速車は、歩道を通行することは不適当であると考える。

一方で、(略)電動モビリティは最高速度を制限することが容易であることから、小型低速車について、歩道通行車と同様の最高速度に制限されるであれば、歩道の通行を認める余地はあるものと考える。

ただし、歩道が本来歩行者の為の場所であることを踏まえ、歩行者の安全な通行が阻害されることがないよう、速度の制限が確実に行われることを担保するための措置や小型低速車が通行できる歩道を制限することについて検討すべきである。

引用:多様な交通主体の交通ルールの在り方に対する有識者検討会報告書
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/council/saisyuhoukokusyo.pdf

残念ながら、今回の検討内容の論点では歩道の走行の可否についてばかり述べられており、
時速20㎞を超える車輛の扱いの結論については記載がありませんでした。

これについては、次回以降の有識者会議で議論され、方向が決定されることを期待したいと思います。

総括

いかがでしたでしょうか。

最後に、電動一輪車・セグウェイがどのような区分となるかを
現時点で判明している内容から纏めておきたいと思います。

区分時速走行道免許ヘルメット着用自賠責保険条件該当する電動一輪車の例
小型低速車~20km/h(歩道)
普通自転車専用通行帯
自転車道
車道
不要任意最高速度の制御ninebot one A1/S2
INMOTION V5F
KINGSONG KS-14D
原動機付自転車
特定小型原動機付自転車
~30km/h
車道必須ninebot one Z6/Z10
INMOTION V10F
KINGSONG KS-S18
:現時点で判明していない、もしくは変更の可能性があるもの

「電動一輪車・セグウェイは公道を走行することができない。違法である」という文言も、
もうすぐ過去のものになろうとしています。

では、一体いつから公道走行が可能になるのかについてですが、

有識者検討会は今年度中に内容を纏め、法改正にて対応することを検討しているとのことですので、
早くて2022年末2023年には公道走行が合法になると思います。

これらに関する法改正は、途中で音沙汰が無くなったり、立ち消えになったりすることはありません。

日本におけるパーソナルモビリティの夜明けまで、もうあとわずかです。

以上、Alai Smi-yo-Theeでした。

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