電動キックボードやバランススクーター、電動一輪車・セグウェイなどの商品説明には最後に少しだけ、
「日本での公道走行は禁止されています。」と、まるで契約書の不利益な条文かのように小さく書かれています。
しかも、理由などには一切触れずに、その一文のみ記載されているだけです。
これに対して気が付いた勘のいいユーザーは、公道走行を諦めるどころか、購入すること自体諦めてしまいます。
しかし、気が付いても無視した、若しくは本当に気が付かなかったユーザーが購入したあと公道を走行し、
それらの人々がだいたい問題を起して警察に捕まり、そしてニュースになるわけです。
「公道を走ってはいけないとは知らなかった。」
この問題には、商品を売りたい販売者側の思惑と、購入したいユーザー、そして日本の法律によって、
誰もが見て見ぬふりをするという、タブー化している現状があります。
今回は、電動一輪車を所有しているユーザー・これから乗りたいと考えている方たちに向けて
そのタブーを白日の下に晒していきたいと思います。
この記事を読んでも落胆しないでください。
日本において、公道での走行が一部限定的に解禁になる可能性があります。
それも比較的近いうちに実現する可能性が高いのです。
それはまた別の記事にまとめたいと思いますが、
今回はなぜ「日本の公道での走行は禁止されています。」になるのか、
走行するとどうなるのかについて解説したいと思います。
もう少し文章の意味について考えてみる
「日本の公道での走行は禁止されています。」という文章の中には、
推測するだけでも以下のような内容が含まれています。
無免許運転違反(運転免許がない場合)
- 500W出力を超えるモーターを搭載した車両は、法律上では自動車に該当します。
- 運転免許を受けていない状態で、自動車で公道を走行することは法律で禁止されています。
- 運転免許を受けていない状態で当該車両を運転した場合「道路交通法第64条の違反」になり、
法律により処罰されます。 - 罰則:3年以下の懲役または50万円以下の罰金 ※
物理ブレーキ:制動装置等に関する違反
- 電動一輪車・セグウェイは、道路交通法に基づく保安部品(以下保安基準)である
ブレーキを搭載していません。 - 前輪・後輪の概念がない為、前輪と後輪の両方にブレーキを搭載することができません。
- そもそも、ジャイロでバランスをとることから、ブレーキを付けることはできません。
- 保安基準を設置せずに公道を走行することは、法律によって禁止されています。
- もし当該状態で公道を走行すると「整備不良車両の運転禁止違反」になり、法律により処罰されます。
- 罰則:3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金 / 違反点数2点 ※
自動車損害賠償責任保険への未締結による違反
- 保安基準が設置できなければ公道で走行するための許可が下りず、
ナンバープレートも発行することができません。 - そのため当該車両は自動車損害賠償責任保険(以下自賠責保険)を締結することができません。
- 自賠責保険を締結していない状態で公道を走行することは、法律によって禁止されています。
- もし当該状態で公道を走行すると、「自動車損害賠償責任法第5条の違反」になり、
法律により処罰されます。 - 罰則:1年以下の懲役または50万円以下の罰金 / 違反点数6点 ※
ここでやっと「禁止」が、法律によって禁止されているということがわかります。
上記3つの違反は、あくまで公道で運行する場合に限るので、私有地での走行は法に触れません。
三行で纏めます。公道を走行する場合、
- 免許をもってなければ無免許なので違法。3年以下の懲役または50万円以下の罰金 ※
- ブレーキがつけられないので違法。3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金 / 違反点数2点 ※
- 自賠責保険に加入できないので違法。1年以下の懲役または50万円以下の罰金 / 違反点数6点 ※
なので、「日本の公道では走行は禁止されています。」となるわけです。
※条件により異なる可能性があります。
疑問点:現行の法律に当てはめるという矛盾と違和感
違法であるというだけで片付けられてしまうというのは、何かおかしいと思いませんか?
そもそも、上記の3点の説明では所々腑に落ちない、承服できない箇所がたくさんあります。
その腑に落ちない違和感と疑問点について議論してみたいと思います。
セグウェイ・電動一輪車は「自動車」に分類されるという解釈
ここでは議論の対象を「電動一輪車」のみに絞りたいと思います。
電動一輪車は、モーターの出力から推察すると、自動車に分類されるとのことです。
自動車と一言に言ってみても、どんな乗り物でも動力があれば自動車にはなるとは思いますが、
なんと、電動一輪車は軽自動車に相当するというのです。
自動二輪でも、原動機付き自転車でもなく、軽自動車です。
この時点で、既にこじつけ臭さが満載です。
眼前にあるモノとして電動一輪車を正面から受け止めた時に、果たして己に恥じることなく、
「電動一輪車は軽自動車だ」と断定することができるでしょうか?
できる者のみ石を投げなさい。
出力のみで軽自動車に分類するのはさすがに横暴すぎると私は思います。
誰がどうみても、自転車から自動二輪の間に位置する乗り物であることは明白です。
そもそも、「今の法律に当てはめると」という前提自体が間違っていると言えるでしょう。
電動一輪車は今、「搭乗型移動支援ロボット」という分類に定義されていますが、
将来の交通手段になる可能性が少しでもあるならば、
厳密に定義・精査したうえで、公道での運用について論じるべきではないでしょうか。
言うなれば「電動一輪」という新たなカテゴリによって分類・定義されるべきだと私は思います。
電動一輪車にはブレーキがついていないと断定できるのか?
この議論もすでに、「今の法律に当てはめると」という前提がおかしいということを先に述べておきます。
電動一輪車に、ブレーキはありまーす!
通常のディスクブレーキなどは、ブレーキパッドとディスクの摩擦によって速度を減速させる物理的手法に対して、
電動一輪車のブレーキは、電力と磁力を使用してモーターの回転を制御することで速度減速を行う、
電磁ブレーキシステムを採用しています。
アクセルを放すエンジンブレーキとは異なり、前進するスピードを殺す力を持っています。
電動一輪車における急制動能力は、電力と磁力に依存する為、
バッテリーの電気容量とモーターの出力が大きいほど制動力が高くなります。
つまり、車両の大きさに関わらず、バッテリーの電気容量とモーター出力は大きいほど安全性が高まる為、
単純にモーター出力の大小だけで分類わけをすることは誤りであると言えます。
また加速も減速も、共通のバッテリーから電気容量を使用して行う為、
電気容量が少ない時は減速する力が弱くなりますが、
同時に加速する力も弱くなるので、暴走する可能性もごく僅かなのです。
しかしこれだけでは御託を並べているだけに過ぎませんが、
現実として、電動一輪車のブレーキ性能が問題になることは、世界中をみてもほとんど例がありません。
問題になるのはむしろ、バッテリーが原因による火災と、カットアウトによる転倒の恐れです。
(電動一輪車の機能・現象・症状についての用語・キーワードまとめ)
しかし、現行の法律では、電磁ブレーキシステムは「駆動系」に該当し、「制動系」ではないとして
ブレーキとしての性能を認めておらず、このことからメディアなどではたびたび
ブレーキがついていないという表現が用いられます。
また、
- 道路交通法施行規則(制動装置)
- 第9条の3法
- 第63条の9第1項
によって、前輪および後輪を制動することと定められており、そもそも一輪しかない電動一輪車には
この条件に当てはめることができません。
さらに、セルフバランシングで車体の平衡を保つ、電動一輪車を含めたバランススクーターは、
物理的手法による制動装置を設置することはできません。
もし仮に制動装置を設置したとしても、全く機能しないか、転倒する危険性さえあります。
これらのことから、法律上では電動一輪車はブレーキがない為、保安基準を満たさないとされています。
非常にナンセンスです。
最初から言うように、現行の法律に照らし合わせるからそのような物言いになるだけで、
電磁ブレーキの性能に関して新しい規格を設け、それに沿った法律を新たに施行すればよいだけの話です。
温故知新:イギリスの赤旗法から学ぶ
「赤旗法」とは、1865年にイギリスで制定された、自動車の交通規制法条令のことです。
その時代はまだ内燃機関を搭載した自動車は実用化されておらず、自動車と言えば蒸気自動車が主流でした。
どういった交通規制法なのかを簡単に説明すると、
- 蒸気自動車両に適用された。
- 歩行者や馬車の安全確保の名目だが、実際は馬車業者など仕事を奪われることを危惧した
業界による圧力だった。 - 郊外では6km/h、市街地では3km/hまで速度を規制する。
- 赤い旗かランタンを持った人が車の55m先で先行し、騎手や馬車に自動車の接近を予告する。
- 1895年に廃止。
この交通規正法はイギリスの自動車産業の発展を遅らせる結果となり、結局廃止になっています。
現在、自動車が人の前を通過するのに、ここまで大げさなことをする必要があるでしょうか?
当然ありません。時代が進めば世の中の認識も変わり、当然、時代に見合った法律に変わっていくのです。
公道の走行を禁止している現在の法律・規制というものは、
セグウェイや電動一輪車などの画期的な移動手段をむやみに規制している現代における赤旗法そのものです。
それを証拠に、日本でのセグウェイの公道走行は、実証実験と言われるような
行政による走行デモンストレーションの領域を出ず、更に何年も進展がなかったため、
関係するベンチャー企業の発展も妨げる結果となり、
ついにはChinaに技術力・商品展開において完全に遅れを取ってしまいました。
ドローンや自動運転についての規制も同様の有様です。
日本は、1980年代までの経済発展以降、
平成時代にあまりに安心・安全のために規制を強化し過ぎてしまいました。
その結果、国外との競争力に負け、今では先進国で唯一国内総生産がマイナスである、
経済成長のない国として世界に醜態を晒しています。
このままでいいのでしょうか?
現在のような、突如として安心・安全が失われてしまった世界情勢だからこそ、
これまでの安心・安全の為のむやみな規制について見直すときが来ているのではないのでしょうか。
総括
本題に立ち返って、 「日本の公道での走行は禁止されています。」その理由と、
走行するとどうなるのかについて、ご理解いただけたでしょうか。
- 道路交通法によって禁止されている。
- 公道を走行する為のブレーキが原理的に設置できないことで、ナンバーが取得できず
自賠責保険にも加入できない。 - 場合によっては無免許運転になる。
- 公道を走行すると、法律により処罰される。1~3年以下の懲役または5~50万円以下の罰金
それに対して、私の意見としては、
- 現行の法律に当てはめるのではなく、公道走行が実現できるように
新たなカテゴリーの新設し、法律を改定すればいいだけの話。
と持論を展開させていただきました。
最初にも述べましたが、希望はあります。道路交通法は近いうちに、
搭乗型移動支援ロボットに関する規制緩和を目的に、改正されることになる予定です。
この内容に関しては次回以降、現状がどのようになっているかなどを詳しく解説したいと思います。
(電動一輪車・セグウェイが公道を走行できる日は現実になります。)
我々は、すぐ側まで来ているその時が来るまで、耐え忍びましょう。
以上、Alai Smi-yo-Theeでした。
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