2021年8月26日、kingsongから新たな電動一輪車であるS20 Eagleがついに発表となりました。
ハイパワーな車両であることは見てわかりますが、
注目すべきはそういった過度なスペックではありません。
既に多くのユーザーは、スペックの高さよりもユーザビリティ・耐久性・高い品質を重要視する傾向へと
変化してきています。
S20は、そのようなユーザーのニーズを満足するにたる車輛となるのでしょうか。
今回は、日本で唯一S18を掌握したAlai Smi-yo-Theeが、発表されたS20の情報について
徹底的に分析していきたいと思います。
S20から伺えるKINGSONGのユーザーへのレスポンス
再度、この公開された画像を見て下さい。
You Spoke, We Listened.
これはS18が発売された後に発覚した問題点や、その改善案などをキングソングがユーザーからの
様々な指摘を真摯に受け止めて、S20にフィードバックをかけて改善を図ったことをアピールする
キャッチコピーに他なりません。
S18発売以降、電動一輪車乗りには評判であったベテラン・シャーマンや
INMOTION・V12の評価についても分析され、設計の際に参考にされていることも容易に想像がつきます。
あなたが望むすべてが含まれています。
引用:https://www.kingsongs20.com/specifications
コンセプトから現実へ。
新しい高みに到達するために、S18の製造後、私たちは懸命に働き、最も極端なものに取り組む
新しいホイールのプロトタイピングと設計を絶え間なく開始しました。すべての努力と献身により、S20イーグルで設定したことを達成することができました。
S20のすべてに目的があり、パフォーマンスや耐久性に役立たないものはすべて削除しました。
電動一輪車の整備の際にはシェルやカバーといった外装の取り外し、
付け替えという手間がその都度発生します。
ですが、外装自体には十分な強度がない為に、転倒した際の車体を保護することができません。
そんな中、S20ではシェルやカバーのない、完全なネイキッドスタイルになっており、
それと同時にスポーツ的なデザインを両立させています。
S18にはデザイン性を優先させるため、ネジ穴が意図的に隠されていましたが、
S20ではいくつかの箇所でネジの上面からアクセスすることができる留め穴を確認することができます。
これらのことから、車輛整備の行いやすさ、必要なもの・ニーズに対する取捨選択が
しっかりとなされた設計が行われているものと考えられます。
電動一輪車が「高級なオモチャ」から「未来の交通手段」へと
進化を続けている良い傾向であると言えるでしょう。
S20 eagle 基本仕様
まずは一般的な仕様から見ていきましょう。
キングソングより公開されているデータシートをご覧ください。
全体の構成やサスペンション機構はS18を踏襲した設計になっているように見えます。
では、S18から進化した部分はいったいどこにあるのでしょうか。
スペック比較(S20/S18)
S20のスペックをS18のスペックと比較してみましょう。
車両 | S20 | S18 |
最高速度 | 70km/h | 50km/h |
航続距離 | 200km | 100km |
重量 | 35kg | 25kg |
耐荷重 | 120kg | 150kg |
充電時間 | 5h | 6h |
バッテリー | 2220Wh | 1110Wh |
駆動電圧 | 126V | 84V |
モーター | 3300W | 2200W |
タイヤ(リム径) | 20″(14″) | 18″(14″) |
サスペンション(トラベル) | 240㎜(75㎜) | 200㎜(57㎜) |
(航続距離に関して、実際には公称値に対して5~6割程度が実効値になります。)
この比較表をみると、その名の通りS18の全てのスペックを一回り拡張させた印象を受けます。
S20の注目すべきポイントをピックアップしてみたいと思います。
重量
一部サイトでは28kgとの表記も見られますが、バッテリー・モーターの仕様から鑑みて、
S18の重量に+3kgで済むとは思いません。
S18に関しても、素材の一部をアルミ合金からスチール合金に設計変更したことで、
重量の仕様が22kgから25㎏になった経緯があります。
その為、実際の重量は36±2kg程度であると想定できます。
バッテリー・駆動電圧
S18のバッテリー容量(1110Wh)では、モーター出力に対しての脆弱性が指摘されていました。
その為、急勾配の坂を駆け上がる場合や、急加速によってホイールに高負荷が掛けられることで
電力が遮断されてしまうカットアウト現象が起こる危険性がありました。
その為、ライドの際には高負荷がかからないように多少なりとも気をつけなければなりませんでした。
また、加速・減速に対する出力に関しても、S18はKS-16Xと比較しても明らかに非力であり、
特に、上り坂でのトルク不足とブレーキング性能に不満があるという意見が多く見受けられました。
対してS20では、モーターの出力も向上していますが、バッテリー容量が2220Whと2倍になり、
駆動電圧に関しては、今までどのホイールも採用しなかった100Vを超える未知の領域となる126Vです。
これらの仕様によって、ライダーが電力負荷に気を使うことなく、出力不足のフラストレーションも
解消されると考えられるため、さらにストレスなくライドが楽しめるようになるものと思われます。
モーター
S20のモーターには、キングソングの車輛では初めての中空モーターが採用されるようです。
中空モーターは
- 通常の軸モーターよりも慣性質量が軽くなる分、駆動・停止のレスポンスが向上する。
- 質量効果の分だけ熱影響を少なくできる。
といったメリットがあり、電動一輪車には最適なモーターであると考えられてきました。
しかし、実際に中空モーターを採用した車輛(GotWay RS新シリーズ・INMOTION V11)の多くに、
使用し続けるうちに、駆動した際に酷いノイズが発生してしまう等の不具合が多発することになりました。
そのほとんどが、ベアリングシールによる防塵・防水性能の不足であり、
それが原因でベアリング内部のボール・リテーナーにまで錆が及んでしまい、
使い物にならなくなるという致命的な欠陥を抱えていました。
このような市場の現状を鑑みたうえでも、キングソングはS20に中空モーターを採用することにしたようですが、
その設計には細心の注意が払われた模様です。
中空モーターの耐水性をテストするための包括的なテストを実施しました。
引用:https://www.kingsongs20.com/copy-2-of-faq
私たちは他のブランドの過ちから学び、それに従わないようにしました。
このモーターはカスタムで、シールも完全にカスタムです。
特注のベアリングシールが汚損に強く、
ベアリング内部に悪影響を及ぼさないように設計されているようです。
この回答を見る限り、これまで中空モーターを採用して噴出した問題に関しては
解決されることになると思われます。
タイヤ
S20では、タイヤのリム径はS18と同様の14インチとなっています。
これは、S18で使用されていたタイヤも使用できることを示しています。
タイヤが2021年8月26日現在、まだ完全には決まっていませんが、
引用:https://www.kingsongs20.com/copy-2-of-faq
さまざまなタイヤを入れるのに十分な開口部があります。
内側の開口部の幅は100mmで、これまで21.5インチのホイールを使用してきました。
S18の場合では、フェンダーのクリアランスが十分ではなかった為、
リム径が14インチのタイヤであっても、
使用できる幅・扁平率そして直径が限られたものになってしまいました。
S20では十分なクリアランスが確保されている為、使用できる20インチタイヤも
さらに選択肢が増えたと言えるでしょう。
幅100mm、全高21.5インチという内容から推測すると、使用できるタイヤは
- 100/90-14 (全高約21インチ)
程度までであれば使用できるものと考えられます。
また8/26現在、キングソングはS20に使用されるタイヤの候補をアンケートしているようです。
またどのタイヤもインナーチューブ方式タイヤになります。
候補として挙がっているタイヤのスペックを見てみましょう。
名称(メーカー) | K262(KENDA) | C-6004(CST) | K272(KENDA) |
サイズ | 2.75-14 | 2.75-14 | 2.75-17 |
プライレーティング | 4PR | 6PR | 4PR |
今のところ、C-6004(CST)が一番支持を得ており、続いてK262(KENDA)となっているようです。
これには私も C-6004(CST) を推したいと思います。トライアルタイヤであるK262は、
オンロードも難なく走行することが可能ですが、全体的にオフロード仕様に寄り過ぎていると思います。
サスペンション
サスペンションのトラベルも、S18では57㎜から、S20では75㎜とストロークが長くなっています。
それに伴い、全長200㎜仕様のエアサスペンションから
全長240㎜仕様のスプリングサスペンションに変更されています。
独自のクロスサスペンションシステムは、レーシンググレードレベルの構造を採用し、
出典:kingsong
最高のサポートとソフトなリニアダンピング体験を実現します。
リンケージにより、力は非線形になり、平坦な道路では柔らかく、
険しい地形では強い理想的なサスペンションを設計します。
S18の致命的な問題点として、サスペンションの性能以前に
サスを駆動させるための機構がうまく働かない為に
- サスペンションの抵抗 < 駆動機構の抵抗
となってしまったため、サスペンションの性能を発揮させることができませんでした。
最新のバッチ若しくは自力で修正を行うことによって
- サスペンションの抵抗 >>= 駆動機構の抵抗
程度にまでなってきたため、
S18はこの時点でやっとまともにサスペンションを交換・比較できる
状態になってきたところだったのですが、
S20では、高性能と謳われるエアサスペンションを排し、
スプリングサスペンションを採用することになりました。
スプリングサスペンションの特徴として、
- スプリングの分だけ重量が重い。
- エアサスに比べて応答性が高く、小さな衝撃に対しても確実に反応を示す。
- 大きな衝撃に対しても応答性が高い。
- 荷重が仕様と大きく異なる場合には、対応にスプリングの交換が必要になる。
エアサスペンションの特徴としては、
- スプリングサスよりも軽量。
- エア挿入により、荷重に応じてサスペンションを調整することができる。
- スプリングサスに比べて反動に対する応答性が鈍い為、乗り心地を平坦化して快適にする役割がある。
S18が実際に運用され続けた結果、オンロード使用を想定したエアサスの安定性よりも、
激しいトレイルライドや階段降りに追従するような応答性の俊敏さと、
さらに大きなストロークが必要とされていると判断されたのかもしれません。
さて、私としては、サスペンション機構に関して現在S18に使用されているベアリングである
FUSHI6800VRSが、S20の機構にも採用されていないことを願うばかりです。
その他の一般仕様
ここからは、標準的な仕様を見ていきたいと思います。
内蔵ディスプレイ
ベテラン・シャーマン以降、INMOTION・V12やBEGODE・HEROにも
流行りのように採用されている内蔵ディスプレイを搭載しています。
シート兼カバーによってディスプレイを保護している点に好感が持てます。
しかしディスプレイが車体に装備されたことで、破損した際の整備性は悪くなったともいえるでしょう。
ディスプレイの表示内容は、走行中にアプリを開いていれば確認できることから
私としてはディスプレイ内蔵にそこまで魅力を感じません。
走行中に頻繁に確認するのは、現在の走行スピードではなくバッテリーインジケータが大半です。
なので、バッテリー残量さえわかる液晶さえあれば問題ないと私は思います。
タッチパッドなどは原価の上昇の要因にもなるので、
品質過多となる余計な機能の搭載はできるだけ避けてほしいと思います。
スパイクペダル
グリップテープからスパイクになったことよりも、ペダルが一枚のプレートのみになったことで
剛性が向上したことの方が改善点として大きいと思います。
S18では、ペダルは二枚のプレートで構成されており、それを上下でネジ止めしていたために
踏みつけた際の剛性が低く、感触があまり優れているとは言えませんでした。
フットペダル
S18のペダルにもあった機能で、ペダル高さを3段階に調整できるようです。
私の経験では、ペダル位置が高すぎるとバランスが安定しない為、
できれば最底辺に調整を行いたいと考えています。
調整式パワーパッド
パワーパッドの位置が上下に調整可能で、脚に対してタイトにもラフにもできるようです。
これによって、ジャンプアクションの際にパワーパッドをタイトに調節することで、
車輛を持ち上げやすくなると思います。
ですが、約35kgの重量の車輛をジャンプアクションさせるのは結構大変だと思います。
ジャンプアクションなどを行いたい場合にはS18を使用した方がよいでしょう。
キックスタンド
素早く安定してステイできることは、電動一輪車では結構重要な要素です。
私としては、今までのようにフロントバンパーにその機能を兼用させてもよかったと思います。
フロントバンパー
転倒時における保護の為のバンパーであるならば、素材は単なる強化プラスチックではなく、
CFRPを採用してほしいと思います。
電動一輪車の多くの外装は、カーボンフェイク・プラスチックなので、
保護のためのシェルとしては強度が不足している為、ほとんど役に立っていないのが現状です。
トロリーハンドル
キングソングが得意とする、斜め掛けの両手持ち大型ハンドルではなく、
S18に採用された垂直方向の片手もち小型ハンドルのようです。
トロリーハンドルの位置が少し前方にある為、モーターの慣性に振り回されてしまい
取り回しが少し悪くなるのではないかという懸念はあります。
ヘッドライト
向きを調整することができます。
「5W*8」とありますが、これはあくまで消費電力の話になりますので、
全光束が何lmあるかはここから判断することはできません。
しかしKS-16Xなどの実績から、夜間でも十分明るく、実用上問題ないことは想像できます。
テールライト
リーン方向に赤いテールライトが流れるように光ります。
S18にも同様の機能がありますが、方向指示器の機能としての使い勝手はイマイチです。
防水性能
2021年8月26日現在、IP定格はありませんが、S20は耐水性があるため、
引用:https://www.kingsongs20.com/copy-2-of-faq
雨の日に乗っても車両に影響はありません。
このことから、現段階でのS20のプロトタイプはまだIP試験をパスしていないと考えられますが
現行のS18の防水性能から、IP55程度は今後保証される可能性が高いと考えられます。
総括
いかがだったでしょうか。今回はキングソングのニューホイールであるS20Eagleについて
考察も含めて解説しました。
私が一番気になっているのは、CGモデルではサスペンションスライダーが確認できないという点です。
車輪の上下運動を処理するためには必須要素ですが、実際はどのような構造になっているのか
バッテリーの後ろ側に隠れてしまっている為、確認することができません。
これについては、実際のプロトタイプ車両が動画になったときに
確認してみないことには判断できかねます。
今回の詳細で分かったことは、S20はS18の完全相互上位車輛というわけではなく、
ふたつで住み分けを行っていくものと考えられます。
- S18 平地やライトなトレイルを、休日に半日程度楽しみたい方、
軽快で大胆なジャンプアクションを行いたい方向け - S20 険しく長い山の峠をオフロードで超える・広大な砂漠を長距離オフロード、
ロングライドで走りぬけたい方向け
さて、気になる金額は日本円にして約¥365,000 !
1stバッチの出荷は、生産が順調に進めば2021年12月下旬になるとのことですが、
遅延する可能性は十分あると思います。
新たな情報が入り次第、本ブログで内容を更新していきますので、ご期待下さい。
以上、Alai Smi-yo-Theeでした。
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