アナタの乗る電動一輪車がどのように機能して走るのか、それを理解するためにはまず
電動一輪車がどのようなパーツで構成されていて、どのような構造をしているのかを把握する必要があります。
今回は、電動一輪車の内部構造と主要なパーツの役割について解説したいと思います。
主要内部構成(ハードウェア)
ここでは、車体本体(ハードウェア)に焦点を当てて解説していきます。
電動一輪車は、バッテリーの電力を使用したコンピューターとモーターによって駆動しています。
- モーター:インホイールモーター
- バッテリー
- コンピューター:コントロールボード
最も重要となる部品要素はこの3点で、セグウェイが商品化されたときから変わらず
どの電動一輪車にも共通して存在しており、現在これらを使用しないで駆動する電動一輪車は存在していません。
では、主要部品3点についてみていきましょう。
インホイールモーター
電動一輪車の要となる、モーター兼ホイールタイヤです。
中央のモーターとホイールが一体化しており、タイヤを装着することができます。
従来の内燃機関をもつバイクなどと大きく異なる点で、
モーターの動力をタイヤの回転に直接に用いることができます。
その為、ギア・クラッチ・スプロケット・チェーンなどの
内燃機関からタイヤへ動力を伝える為の部品が必要ないので、
部品点数が極端に少なく、コンパクトな車体を実現可能にしているのです。
モーターは、我々がよく知るモーター(DCモーター/ブラシ付モーター)ではなく、
ブラシレスモーターが使用されています。
ブラシレスモーター
モーターは、電気を流した電磁石(以下コイル)が永久磁石に引き寄せられたところに、
電磁石のS・N極を反転させ、これを交互に連続させることで回転しています。
ブラシ付モーターはブラシが固定された位置にあり、磁力による回転で整流子の位置が変わり、
極を交互に変えるスイッチ的な役割をしています。
対してブラシレスモーターはその名の通りブラシがなく、 そのかわりに、固定されたコイル自身が
電力を電子制御によって管理されることで電磁力が調整され、永久磁石を回転させます。
ブラシレスモーターは、ブラシ付モーターのようにブラシと整流子が物理的に接触することがない為、
ブラシ付モーターに対して耐久性が高く長寿命です。
さらに、磁力を電子制御することでブラシ付モーターでは制御しきれなかったトルクを最低限の電力で
効率的に最大化することができ、省エネで高効率・高トルクを実現しています。
モーターはバッテリーより電力供給され、コントロールボードから電子制御を行い、
回転方向と回転力を制御します。
ホイール・タイヤ
ホイールとタイヤは、自動二輪などと同じ汎用的な構造になっており、
形状・寸法が合えば市販のタイヤに交換することもできます。
交換の際にも、ホイールからタイヤを外す、
ホイールにタイヤを入れるといった作業内容は自動二輪と変わりません。
そのかわり、電動一輪車は一輪しかないおかげで、整備の手間が半減されます。
バッテリー
リチウムイオン電池セル
単電池型のリチウムイオン電池セルを幾本も接合させ、バッテリーパックを構築しています。
電池セルの規格としては、
- 18650 (φ18㎜、長さ650㎜)
- 21700(φ21㎜、長さ700㎜)
の両方が車両の仕様により使い分けれられています。
また、セルのメーカーとしては、
- LG
- Panasonic
等の品質の高い製造メーカーのセルが使用されています。
バッテリーマネジメントシステム
さらに、バッテリーマネジメントシステム(以下BMS)と呼ばれる保護回路基板と
バッテリーパックの組み合わせにより構築されており
電池セルを常時監視し、充放電状態をチェックすることで、
リチウムイオン電池の劣化を未然に防ぎ、バッテリーパックの長期使用を可能にしています。
コントロールボード
車体の電装系を管理するメインの回路基板で、まさに電動一輪車の頭脳です。
一輪状態で平衡を保つために重要となるジャイロセンサーが搭載されています。
ジャイロセンサーによる自己バランシング
コントロールボードにはジャイロセンサーが搭載されており、
車体の前後方向の角度を常にモニターしています。
前後方向に角度差が発生すると、その角度を補正するように、
モーターは角度の変化方向へ回転・加速します。
例として、車体が前方に傾けば、モーターは前方に回転加速し、
後方に傾けば、モーターは後方に回転加速します。
この傾斜方向の角度を修正するモーターの回転加速によって、
車体の前後方向は自己バランシング(セルフバランシング)されます。
これによって、一輪車であっても前後に転倒することなくペダルに足を乗せることができ、
前方に傾けば加速し、後方に傾けばブレーキング動作を行うことが可能になります。
外装
それでは次に、電動一輪車に共通する外装を見ていきましょう。
ペダル
足を乗せるためのペダルです。開く・閉じるの二つの状態になります。
電動一輪車に乗る為には、通常ではペダルを開いてその上に足を乗せます。
後述するトロリーハンドルで運搬する場合や、収納する場合にはペダルを閉じます。
足を乗せるペダル表面は滑り止め加工が施されており、その種類も多様化しており、
- 滑り止めラバー
- グリップテープ・サンドペーパー式
- スパイク
などがあげられます。
シェル・カバー
それぞれの部品をインホイールモーターにひとつに纏めて、保護するためのシェル・カバーです。
初期の車輛では、アルミ合金などの金属がメインフレームに使用されることがありましたが、
車体の軽量化の為、強化プラスチックが主流となっていきました。
ですが、現在の電動一輪車のスピードで転倒した時の衝撃に対して
強化プラスチックでは十分な強度とは言えず、
車体があっけなく全壊してしまうような事例も少なくありませんでした。
そのため、ベテラン・シャーマンでは、衝撃を受ける為にアルミ合金のケージが設けられるようになりました。
シェルの素材に関してはまだまだ改善の余地があると私も思っており、メーカーには
プラスチックのように軽く、鉄よりも強度の高いと言われる
CFRP(炭素繊維強化プラスチック)を検討してほしいと思っています。
形成の難易度が高く、量産が難しい為、高価であることからなかなか採用されないものと思われますが、
電動一輪車のように強度と軽さが求められる車輛には、将来的に必然になると考えられます。
ハンドル・トロリーハンドル
車体を持ち上げる為、電動一輪車の上部にはハンドルが備えられています。
電源が入っている場合、ハンドルを持ち上げると車輪が宙に浮いたときに、
ホイールが高速で空転(フリースピン)してしまします。
そのため、ハンドルかその付近に空転防止用スイッチがついており、
スイッチを押しながら持ち上げることでフリースピンを防止します。
トロリーハンドルは、車輛の歩行運搬時に使用する便利なアタッチメントで、
通常は伸縮・収納されている為、使用するときに延長・展開します。
ハンドルと一体化しているものもあれば、分かれているものもあります。
サスペンション機構
ここまではどの電動一輪車にも共通する外装でしたが、サスペンション機構に関しては
近年の電動一輪車に新たに搭載された機能です。
足を乗せるペダルと地面の動きをトレースするタイヤの動きをそれぞれ独立させて、
ダンパーによって衝撃を吸収することで、乗り心地の改善と、荒れ地の走破の向上を目的とした機構です。
その原理と機構は車輛により異なり、サスペンションに使用されているダンパーも
空気式、バネ式などがあります。
また、ダンパー自体も、独自開発の垂直式ダンパーであったり、
マウンテンバイク等に使用されている汎用のダンパーが流用されていたりと、
各社の設計思想の違いにより様々な形態が存在します。
これに関しては各社ともに発展途上であり、決定的な機構はまだ決まっていませんが、
S18の成功から、今後は以下の特徴をもつサスペンション機構が主流になっていくと思われます。
- 汎用ダンパーを流用し、調整が可能な機構であること。
- バッテリーの配置は、サスペンションが作用するモーターとは分離されて固定されること。
2021年現在、サスペンション機構を搭載した電動一輪車は、
- INMOTION V11
- KING SONG S18
- BEGODE EX
の3輛が販売されています。
2022年以降では、
- KING SONG S20Eagle
- BEGODE HERO
などがサスペンション機構を搭載して販売を予定しています。
これまでの電動一輪車にはこのような機構はなかったため、
サスペンション機構はなくても走ることはできますが、
搭載した車輛は人気が高い為、今後必須の要素になると考えられます。
その他
これ以下の項目はオプション的な扱いで、これらが装備されていない電動一輪車もあります。
ライト(フロント・テール)
夜間や暗所で前方を照らすフロントライトと、後方に向けた赤いテールライトがあります。
どちらもLED照明で、テールライトなどはコントロールボードと直結している場合もあります。
装飾LED
カバーの内部などに装備された、連装LED照明です。
電子制御により点灯のしかたやカラーの調整などを、
電動一輪車のアプリによって自由に調整することができます。
また、車輛によってはバッテリーインジケータの役割も担っています。
数年前の電動一輪車には必須項目でしたが、
近年では走行を優先して取り付けられていない車輛もあります。
スピーカー
警告音などをビープ音で行わず、専用のスピーカーを用いることでより聞こえ易くなります。
また、Bluetoothで接続を行い音楽プレイヤーのスピーカーとしても用いることができます。
使用される用途はもっぱら音楽を流すためであることがほとんどなのですが、
性能のよいスピーカーを設置しようとすると、電動一輪車内部の貴重なスペースを占用されてしまうことから、
搭載を嫌うユーザーも少なくありません。
パワーパッド
脚で電動一輪車を挟む際に、電動一輪車のシェルから受ける硬さをカバーするために
足首の位置や内膝の位置にクッションが設置されている車両もいくつか存在しています。
ですが昨今では、車体と足とのグリップを高めるための、
脚に対してよりタイトなパッドが社外品のオプションとして市場に出回っています。
そのような市場を鑑みて、昨今の電動一輪車ではよりタイトなパワーパッドを
オプションではなく標準装備にする傾向があるようです。
シート
電動一輪車は、基本的には立って乗る為の乗り物であるので、あくまでオプションとして
ハンドル上部に取り付けて、座ることができるようにしたシートが社外品で販売されています。
ですが、シートとしては前方に位置しすぎているため、
どうしても膝が突き出た格好で座る形になってしまいます。
KING SONG S20Eagleではシートが標準装備となり、
シートの位置も比較的後方になるように設計されているようです。
(KING SONG S20 Eagle のスペックを徹底解析)
総括
今回は、電動一輪車のメインである内部構造についての説明の筈でしたが、
結局、電動一輪車の全概要の説明となってしまいました。
しかし、この記事を最後まで読んで頂けたら、電動一輪車がどのようなモノかご理解いただけるかと思います。
この記事の中にもいくつか出てきた、電動一輪車が起動することで起こす現象については
通称と作用について、別の記事で解説したいと思います。
以上、Alai Smi-yo-Theeでした。
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