マウンテンバイクのエアサスを電動一輪車のサスペンションに取り入れたこのKS-S18は、
電動一輪車市場に大きな風穴を開け、サスペンション搭載型という革命をもたらしました。
エアサスとロッドが露出したこれまでにはないセクシーなデザインに、
電動一輪車ファンは魅了されることになります。
今回はこの電動一輪車の革命的車輛であるKS-S18について、詳細に迫っていくことにしましょう。
概要
INMOTION社が業界初となるサスペンションホイールであるV11を発表した直後、
KINGSONGは対抗車輛としてKS-S18を発表しました。
垂直式のサスペンション機構を採用したV11に対して、
S18は自転車用の汎用エアサスと駆動機構を合わせたサスペンション機構を搭載していました。
今日でも、サスペンション搭載の電動一輪車の中では一番人気があり、評価が高い車輛となっています。
スペック比較(16X/S18)
KINGSONG最高峰のモデルである、KS-16Xとの比較を行ってみましょう。
名称(メーカー) | KS-16X(kingsong) | KS-S18(kingsong) |
平均価格帯 | \210,000 | \200,000 |
最高速度 | 50km/h | 50km/h |
航続距離 | 150km | 100km |
本体重量 | 24.4kg | 25kg |
耐荷重 | 150kg | 150kg |
充電時間 | 8.4h | 6h |
バッテリー容量 | 1554Wh | 1110Wh |
駆動電圧 | 84V | 84V |
モーター | 2200W | 2200W |
タイヤサイズ | 16″x3″ | 18″x3″ |
車体ステイ機能 | 可 | 可 |
トロリーハンドル | 可(標準品) | 可(標準品) |
バッテリーインジケータ | 側面装飾LED | なし |
ヘッド/テールライト | 標準搭載 | 標準搭載 |
ウェイトバランス | サイドウェイトダブル | サイドウェイトクワトロ |
ペダル高さ平均/角度 | 175㎜/7.0° | 175㎜(プリロード時) 220㎜(無負荷時) /6.0° ※ネジ位置中段 |
USB出力ポート | 搭載 | 搭載 |
Bluetoothスピーカー | 搭載 | 非搭載 |
サスペンション/ストローク 瞳径/瞳間隔 | 非搭載 | DNM AOY-36RC/51mm φ12mm/200mm |
この比較をみてもわかる通り、スペックは16Xの方が高いということです。
S18はサスペンション機構を搭載した代わりに、バッテリー容量が若干少なくなっています。
ですがモーター出力は16Xと変わらないため、加速、減速、航続距離の点でリミットが掛かっています。
特徴
サスペンション
サスペンションには、マウンテンバイクに用いられるDNM AOY-36RCが使用されています。
タイヤの空気とは別にサスペンションに空気を入れる必要があります。
ポジティブチャンバー、ネガティブチャンバーという二つのチャンバーがあり、
後述する空気入れで既定の圧まで空気を入れます。
また、ダンパーがどれくらい反発するかを調整する為のリバウンド調整機構があります。
サスペンションの調整方法については、別記事で紹介したいと思います。
接続瞳の間隔は200mmで、DNMの接続瞳径はφ12mmになります。
標準装備ではDNMのショックですが、FOXSHOCKやROCKSHOXなどの
別のメーカーのショックにも変更できるという自由度があります。
ROCKSHOXなどの別メーカーのショックの接続瞳径はφ12.5mmですので、そのまま使用すると、
0.5mm分の隙間によってガタツキが発生してしまいます。
ですので、φ12mmのブッシュピンなどに0.5mm分のテープを巻き付けて
ハマり嵌めにするなどの、多少の工夫が必要になります。
トロリーハンドル
トロリーハンドルはKINGSONG特有の斜め掛け型ではなく、垂直方向・一段階のみの伸縮型になります。
サスペンションバーの内径を上手く活用した設計になっています。
ペダル
ペダルは全面サンドペーパー地で、幅のサイズは少し細長目です。
シェル・カバー
シェルは車体にネジで留められており、その上にブラック・ホワイトのカラー別のカバーが嵌められています。
カバーはネジとノッチによって留められていますが、
INMOTIONの車輛ほどカバーを外すことは難しくはなく、容易に取り外すことができます。
ハンドル
トロリーハンドルと兼用しています。
以下の三段階に伸縮することができ、それぞれ状態が異なります。
- 走行モード:ハンドルが格納された状態で、走行が可能なモードです。
- キャリーモード:フリースピン、タイヤ回転を防止します。(アプリで設定が可能。)
- トロリーモード:押し歩いて運搬することができます。
なお、走行時から誤ってハンドルがキャリーモードになっても、走行モードが維持されます。
タイヤ
ノーマルタイヤ
タイヤは18”x3”を採用しています。
KS-S18はタイヤクリアランスが厳しいためか、実際のサイズは18”x2.75″程度になります。
標準タイヤのスペックを以下に示します。
- H-5102 (CHAO-YANG)
- 18″x3″/76-355
- 240-310kPa /35-43P.S.I.
オススメのタイヤ
クリアランスが厳しい中でも、丁度フィットするオフロードデュアルパーパスタイヤが存在します。
それがいま私が履き替えている、IRC TR-1です。
このタイヤであれば、そのまま取り付けてもインナーフェンダーに干渉することもありません。
ノーマルタイヤよりも少しだけ重量が重くなりますが、
オフロード性能が格段に向上し、オンロード性能もそれほど犠牲にならずに走行することができます。
IRC TR-1のスペックを以下に示します。
- TR-1 (IRC)
- 2.75-14
- 4PR
- MAX LOAD 121Kg (267LBS) AT 225KPa. (33PSI) COLD
【Amazon】IRC TR-1 リア 2.75-14 4PR【\4,118】
ヘッドライト・テールライト
ヘッドライトは白色LEDが標準装備で、電源ボタンで全灯、ハイビーム、ロービームを選択することができます。
全灯の場合の明るさは十分であり、16Xより少し暗い程度かもしれません。
テールライトはコントロールボードと一体化した赤色LEDで、
リーンする方向に対して流れるように発光します。
バッテリーインジケータ
車体から確認できるバッテリーインジケータはなく、アプリを起動して確認する必要があります。
充電コネクタ・USBポート
前面シリコンカバー下にLenovo型の充電ポートとUSB-TYPE Aの出力ポートが一門づつあります。
パッド
電動一輪車ファンの間では有名なYoutuberである、kuji rolls氏がプロデュースした
エルゴノミクスデザインに設計されたパッドを標準搭載しています。
特に下部パッドは、
- くるぶしが当たらないようにスペースが空いている。
- バニーホップが可能なように、つま先によって車体を持ち上げることができるようになっている。
といったこれまでにない画期的なデザインになっています。
専用アプリ
専用アプリと本体をBluetoothによって通信接続することが可能です。
現在の車体の状態をモニターすることができます。
またSettingでは、車体の設定を変更することが可能です。
KS-S18本体の主要な設定項目を下記に纏めます。
設定項目 | 選択 | 効果 | 設定例 |
Speed Setting | アラームバイブ アラーム速度設定 ティルトバック速度設定 | アラームの際のバイブレーション設定(ON/OFF) 3段階のアラーム速度を設定(0,1~50km/h) ティルトバック開始の速度を設定 (1~50km/h) | OFF 0,0,45km/h 50km/h |
Riding Mode | モード選択 | Experient Mode Riding Mode Learner Mode の3つのモードから選択 | Riding Mode |
Firmware upgrage | 確認 | ファームウェアのアップグレードを確認。 最新版が公開されていた場合には更新が可能。 | ver4.06 |
Lift to stop running switch | フリースピン防止設定 浮遊中設定 | (ON/OFF) Mode(Microbalance,Damping,Unmotivated)設定 | ON Microbalance |
Gyroscope angle adjustment (Before and after) | ペダル前後方向角度設定 | ペダルの前後の傾きを設定(-10°~10°) | 3° ※後方傾斜 |
Gyroscope angle adjustment (left and right) | リーン最大角度設定 | 左右に傾いた際のカットオフ角度を設定(40°~70°) | 60° |
付属品
以下が製品に同梱されています。
- 取扱説明書
- 充電器
- ダンパー取扱説明書
- サスペンション空気圧リーフレット
- サスペンション調整用ブリック
- サスペンション調整用空気入れ
ライド・インプレッション
トラブル
入手してから様々な問題が発覚しました。
これまで確認されている問題を下記に纏めます。
初期ロット特有のものであり、現行のロットでは解決されていると言われていますが、
入手した方は一度確認した方がよいでしょう。
機械的な干渉問題ばかりなので、自らで修正することも可能です。
No. | 症状 | 解説 | 解決方法 |
① | モーターケーブル干渉 | モーターケーブルが垂直に折れていない為、 下部パッドの下のカバーに接触し、擦れる。 | 現行ロットで解決済 |
② | サスペンションと インナーフェンダーの干渉 | サスペンション下部とインナーフェンダーの ねじ止めの為の突起が接触する。 | 現行ロットで解決済 |
③ | インナーフェンダーと 後部フェンダーの干渉 | サスペンションが圧縮する際に後部フェン ダーがインナーフェンダーに干渉する。 | インナーフェンダーの カット処置 |
④ | サスペンション可動部 不要なワッシャー | サスペンション可動部で、 ベアリングの動作を阻害する 不要なワッシャーが使用されている。 | 現行ロットで解決済 |
⑤ | サス・ロッドのネジ頭と インナーフェンダーの干渉 | サスロッドの内側に止めているネジの頭が インナーフェンダーに接触し、擦る。 | ネジに極低頭ボルトを使用する。 |
⑥ | サス・ロッドの 干渉 | サス・ロッドの内側がスライダーパンツ の内側に接触し、擦れている。 | サス・ロッドの 擦れた部分をヤスリで削り込む。 |
⑦ | ペダルハンガーによる サス・スライダーの歪曲 | ペダルハンガーの締めすぎにより二本の サス・スライダーの平行が歪められる。 | ネジの対角締直し。 |
⑧ | インナーフェンダーと タイヤの干渉 | タイヤとインナーフェンダーが干渉し、 走行中に擦るような音がする。 | タイヤの装着見直し。 使用タイヤのサイズダウン。 |
これらを修正する詳しい方法に関しては以下の記事をご参照ください。
(KINGSONG KS-S18の細かなトラブルを解消します。)
ペダル
粗目のサンドペーパー地はグリップ力が高く、
ブレーキング時などにも安心して踏みこむことができます。
しかし、踏みこむたびにバキバキと歪むような音がするため、少し剛性が弱いと感じています。
モーター回転快適性
16Xに似た、チリチリとした乾いた音から軽快な回転感覚を覚えます。
しかし、ブレーキングを強めに行うと擦れるような異音がします。
どのS18でもこのような症状は確認できるので、これは仕方のない仕様のようです。
加速・減速
バッテリー容量の都合上、同じモーター出力をもつ16Xよりも加速・減速の性能が下がっています。
その為、加速感はマイルドになり、またブレーキの性能が甘く感じられます。
スピード
ほぼ常に40km/h~45km/hをキープして走行することができますが、
バッテリーの容量が16Xよりも少ない為、長距離走行では限界速度が下がってきてしまいます。
また、バッテリー容量の関係から、
急加速を行うと、カットアウトしてしまうという報告が幾つか挙がっています。
カットアウトに再現性はありませんので、急加速や、急こう配の坂を無理して登るような
バッテリーに負荷を掛ける走り方をすることはできるだけ避けた方がよいでしょう。
ペダル応答性
KINGSONGらしいペダル応答ですが、14Dや16Xよりもマイルドな感覚という印象です。
トロリーハンドル
16X程便利なハンドルと伸縮長があるわけではありませんが、実用的には問題ない範囲の
トロリーハンドル高さです。
持ち運ぶ際のハンドルとしては、角ばっている為に持ちづらく、16Xほど使い勝手はよくありません。
車体ステイ
車体を前方に倒すことで、ゴムバンパーによって比較的安定して車体ステイすることができます。
この車体の大きさで、専用のスタンドなどを使用せずに
安定してステイできることはとても大きなメリットです。
ウェイトバランス
バッテリーは両サイドに前方・後方の計4か所に分かれていますが、
モーターの中心に重心が集中したよいバランスだと思います。
しかし、16Xほどではありませんが、高速時からのブレーキングでは
ウォブリングが発生しやすい印象を受けます。
サスペンション
S18の最も目玉となるサスペンションについてですが、その効果は歴然です。
オフロードや荒れた道でのタイヤの接地をよくするだけでなく、オンロードにおける細かな凹凸も
緩和し、よりスムースな乗り心地を提供してくれます。
サスペンション搭載車輛に乗ってしまったら、
もうノンサスペンション車輛に戻ることはできそうにありません。
基本セッティング
私のS18の場合、サスペンションの調整は以下のようになります。
- DNM AOY36-RC使用時:ダンピングレバーマイナス
- ポジティブチャンバー:200KPa
- ネガティブチャンバー:150KPa
- リバウンド:Fast最大からマイナス5~10クリック(20~25クリック:Fast最大30クリック)
この調整を基本として、より良い条件を探りながら走行を楽しんでいます。
ウィークポイント
しかし、このS18にも不得意な路面が存在します。
それは、足を取られるくらいの砂場です。
サスペンションによって、地面に対してタイヤの重量が適切に掛かるようになりましたが、
砂場では逆にタイヤが地面に対して必要以上の力を与えなくなる為、前進するトルクが減少します。
その結果、前に進むことができなくなってしまいます。
このような場合には、チャンバーのダンピングレバーをOFFにして
サスペンション機能を切ることで、通常走行が可能になります。
総括
いかがだったでしょうか。様々な問題がありましたが、初期ロット特有のもので、
それ以降のロットでは改善されていると聞いています。
全体の印象としては、16Xをマイルドな乗り心地にしてスペックが下回った代わりに、
サスペンションという機能が付加されたといった感じでしょうか。
航続距離を若干犠牲にしながらも、サスペンション搭載の電動一輪車の乗り心地は
これまでにない快適さをもたらしてくれます。
それでは纏めとして、KS-S18の良いところ、悪いところを纏めておきたいと思います。
良い点
- サスペンション搭載により、乗り心地がこれまでの電動一輪車に比べ格段に向上している。
- ダンパーの調整、ダンパー自体の変更など、乗り心地を変えることができる自由度がある。
- サスペンションを生かしたこれまでにないセクシーなデザイン。
良くない点
- 初期ロット特有の機構不良
- 稼働個所に対してクリアランスが明らかに少ない為、干渉の発生個所が多い。
- モーター出力に対して、バッテリー容量が不足している為、加速・減速・航続距離にやや不満。
これからの電動一輪車は、サスペンション搭載が標準になっていくことでしょう。
そして、2022年発売のホイールとして注目すべきはKINGSONGより発表されている、
S20 Eagleです。
(KINGSONG S20 Eagleのスペックを徹底解析)
こちらについても詳細が分かり次第、順次記事にしていきたいと思っていますので、ご期待ください。
以上、Alai Smi-yo-Theeでした。
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