今回は、電動一輪車に関する専門用語を、機能・現象・症状の三つのカテゴリーに分けてそれぞれ解説します。
場合によっては重大なインシデントになりうる事象についても含まれていますので、
ご自身が乗車する際に、該当することがないか一度確かめてみることをおススメします。
電動一輪車の内部構造に関する記事と内容が一部重複しているところがありますが、
そちらをまだ見ていない方はご一読いただけると幸いです。
用語集
今回解説する専門用語を表にまとめました。
それぞれの言葉がどんな意味なのか、それが危険か危険でないかを把握しておくとよいでしょう。
機能 | 能動現象 | 受動現象 | 症状 | |
駆動時 | セルフバランシング | ー | フリースピン | ラビングノイズ |
走行時 | スピードアラーム ティルトバック 回生ブレーキ | アンクルグリップ リーン | ウォブリング | カットオフ |
停止時 | ロック・アンロック BMS | ステイ | ー | パンク 放電 |
機能は主に安全のために働く電動一輪車の機能です。
能動現象は、自ら実施する行為などに該当します。
受動現象は、電動一輪車を操ることで発生する現象です。
症状の前身の可能性もありますので、場合によっては注意が必要です。
症状に関しては重大な問題となる可能性がありますので、もし現時点で症状がみられる場合は、
無理に乗ろうとせず、症状を改善させることを優先させましょう。
機能
セルフバランシング
コントロールボードのジャイロセンサーが角度をモニターしており、
車体の前後方向の角度変化が発生すると、モーターが変化方向に対して回転・加速します。
この角度変化を修正するためのモーターの回転・加速によって、
車体の水平均衡を保ち続けようとする機能をセルフバランシングと言います。
これにより、一輪車であっても前後方向に倒れることなくペダルに乗れることができるようになり、
傾斜する体重移動の方向によって前方にも後方にも加速することができます。
スピードアラーム
高速で走行中に、電動一輪車が「ピピッ」と音を鳴らしいている場合は、走行速度が限界に近いことを知らせる、
スピードアラームが鳴っています。
車輛によってはアラーム音もビープ音ではなく、「Please slow down.」などといった
英語で警告する場合もあります。
スピードアラームが鳴る時速は、アプリによって自在に変えることもできます。
ティルトバック
用語として最も馴染みの薄い言葉かもしれませんが、
ティルトバックとは電動一輪車特有のソフトウェアによる安全機構のことを示します。
走行速度が限界を超えた場合、上記のアラームと共に
ペダル角度が進行方向とは逆向き(ブレーキ方向)に自動で若干傾くことをティルトバックと言います。
また安全の為に、バッテリー残量が少ない場合やバッテリーの温度が極端に低いときには
アクセルして車輛に負荷がかからないよう、長時間ティルトバックしたままになります。
充電したり、状況が改善されると、ペダルが自動でゼロ調整角度に戻ります。
回生ブレーキ
電動一輪車では、走行中に減速を行うとその力の強さによってバッテリーに電力が蓄電される
回生ブレーキシステムを採用しています。
アプリなどでバッテリーインジケータをモニターしているとその現象を確認することができます。
これによって、航続距離をある程度伸ばすことができます。
ロック・アンロック
アプリによって、走行できない状態(動かすとアラームが鳴り響く、セルフバランシングを作動させない)
にされていることをロック状態といいます。
出荷時には車輛はロックされていることがほとんどですので、アプリを使用してアンロックする必要があります。
アンロックすることで、セルフバランシングが作動し、走行可能な状態に戻ります。
つまり、電動一輪車に乗る為にはアプリを使うことができるスマホを持っていることが必須条件になります。
(関連記事を参照)
BMS
電動一輪車に使用されているバッテリーパックは、バッテリーマネジメントシステム(以下BMS)
と呼ばれる保護回路基板とバッテリーセルの組み合わせにより構築されており、
バッテリーを常時監視し、充放電状態をチェックすることで、
リチウムイオン電池セルの劣化を未然に防ぎ、長期使用を可能にしています。
能動現象
アンクルグリップ
走行中に、両足首で電動一輪車の車体を挟み込む姿勢をアンクルグリップと名付けました。
アスファルト走行時に、タイヤのグリップを生かす際にはアンクルグリップを強めた方が
上手く車体を保持することが可能になります。
逆に、オフロードなどではアンクルグリップを行い過ぎず、ペダルの外側に重心を置くようにして、
左右の細かな振動を、足と車体の遊びで受け流すようにするとうまく走行することができます。
リーン
体を傾けてカーブする際の姿勢のことをリーンと呼びます。
タイヤのグリップを生かして、重心を曲がりたい方向に倒してカーブを曲がります。
反対に、タイヤのグリップを使わず、車体とペダルを足先だけで操作して、
タイヤを転がすようにして曲がる方法もあります。
どちらの方がカーブを曲がるのに最適なのかは、その時々の状況によります。
ステイ
スタンドなどによって、電動一輪車の車体を横に倒さずに停車しておく状態をステイといいます。
車輛によってはシェルが車体をステイさせる機能を持ってる場合もありますが、
ない場合にはオプションでスタンドの取り付けを行う必要がります。
受動現象
フリースピン
電動一輪車は、ジャイロによって常に角度計算を行っている為、車体が地面から離れると
地面から受けるタイヤの情報がなくなってしまうことから、
車輪は一定方向に空転し始め、のちに高速回転してしまいます。これをフリースピンと呼びます。
そのあと、電動一輪車はフリースピンを察知して自動で車輪の回転を止めます。
車体を持ち上げる場合など、車輪が地面から離れてしまう機会は多く、
何もしないとフリースピンしてしまいますが、殆どの電動一輪車には、ハンドルやスイッチによって
持ち上げている間はセルフバランシングをオフにする、フリースピンを防止する機能がついています。
ジャンプなどをした際にも車輪が地面から離れる為、あまりに長い時間滞空していると
着地の際にジャイロが効いておらず、転倒するおそれがあります。
今のところはそういった滞空時間の長くなるようなアクロバティック走行に使用されていない為か
あまり問題になっていないようです。
しかし将来的な滞空時間はエクストリーム競技程度になると考えられるため、メーカーは今後、
滞空時間と空転の問題に関して、ソフトウェアによって解決していく必要が出てくることでしょう。
ウォブリング
高速走行時から急に減速を行った場合などに、車体が震えだして制動を困難にさせる厄介な現象を
ウォブリングと言います。
ウォブリングは車体の重心バランスが中心に集まる、扱いやすい車輛に多いことが特徴です。
また、左右二つに分割されているシェルのネジのゆるみによって、走行スピードに対して
シェルの合成が不十分な場合などにもウォブリングを引き起こすことが判明しています。
そういった場合に、高速で走行している最中にブレーキを掛けてウォブリングを起こし、
転倒するといった事例が数多くあります。
ウォブリングが発生するのは高速時から急ブレーキを掛けるときです。
ウォブリングが発生しないようにするには、高速時から減速する際にはゆっくり減速して、
ウォブリングしない速度まで徐々に減速しましょう。
もし少しでもウォブリングの気配を感じだら、一旦ブレーキするのをやめ、
通常時にもどした状態から再度減速を試みましょう。
また、以前までにはウォブリングが発生していなかったような場合にはネジのゆるみを確認して、
ネジの増し締めを行うようにしましょう。
INMOTIONの車輛はバッテリーが上部にあるトップヘビー型が多い為、ウォブリングを起こしにくく、
比較的高速からでもブレーキングがうまくいくという特徴があります。
症状
ラビングノイズ
タイヤを回転させた際に何らかが原因によって発生する、不快な音のことをラビングノイズと言います。
ラビングノイズは音だけでなく車体にも振動を発生させ、
その振動を体にも伝えるため不快感は相当なものです。
ラビングノイズの発生原因はそのときの状況にもよりますが、
現在では以下の二つが原因である場合が多いようです。
- タイヤの回転によってフェンダーをこすってしまう。
- モーターの軸に使用されているベアリングの錆による汚損
タイヤによるフェンダーの擦り
タイヤとフェンダーのクリアランスが明らかにタイトすぎるか、タイヤのサイズが合っていないと、
フェンダーとタイヤが擦り、不快な音を立てます。
解決方法としては、
- 使用するタイヤを見直す:タイヤの幅を狭くし、タイヤの直径を小さくする。
- フェンダーを取り払う:(タイヤが巻き上げた水しぶきによって衣類を汚してしまう恐れがある。)
などがあげられます。
モーター軸のベアリングの錆・汚損
モーターの軸には巨大なベアリングが使用されており、通常はベアリングの側面に防塵・防水の為の
シールが施されており、さらにベアリング内のボールとリテーナーには粘度の高いグリスが付着しています。
そのため、通常の使用範囲であればシールの内側に水が入り込むことなどない筈なのですが、
何らかの原因でシール内のグリスまで落としてしまうようなひどい錆、汚損が発生するらしく、
これが原因でベアリングがさびてしまい、ベアリングが回転するたびに異音を発生させてしまうようです。
解決策としては
- ベアリングの交換:手間と値段は掛かりますが、
こうなってしまった場合には応急処置では済みません。 - 錆びる前にベアリング付近に粘度の高いグリスを塗って、撥水しておく。
:対処療法ですが、一定の効果はあるようです。
などが挙げられます。
カットオフ
走行時に電力が突如としてカットされ、車体の制御そのものが効かなくなることをカットオフと言います。
カットオフした直後はバランスを崩してしまう為、転倒からの大怪我は免れません。
カットオフは、過負荷時に起こりやすいと言われており、
- 急加速
- 体重が重い
- 急坂を無理して登る
- 高速巡行時からの急ブレーキ
などのタイミングで起こりやすい場合が多いようですが、再現性はないようなので
過負荷を掛けないような走行を心掛ける他ありません。
パンク
自転車などと同じようにタイヤがパンクした状態です。
原因はタイヤではなく、内部のインナーチューブが何らかの理由で破損した可能性が高いです。
インナーチューブの破損状況として、
- タイヤバルブの不良による空気漏れ
- 空気圧不足によるインナーチューブのすり減りによって、穴が空いてしまう。
などの原因が挙げられます。
対処方法としては、
- インナーチューブの交換:できればパッチ修理せず、インナーチューブそのものを交換した方が良い。
- 正常な空気圧での運用:空気圧の低い状態では、インナーチューブを痛めやすい。
などが挙げられます。
インナーチューブの交換に関する手順はこちらの記事をご参照ください。
放電
走行していないにもかかわらず、バッテリーの残量が減っていくことを放電と言います。
これは、BMSの関係上、仕方のない側面でもあります。
バッテリーをすべて放電してしまうと、100%まで充電できなかったり、
放電が起こりやすくなったりと、バッテリーの性能が落ちてしまいます。
ですので、走行しない場合でもバッテリー残量のチェックして、
最低でも1か月に一度は充電を行い、フル充電するようにしましょう。
総括
いかがでしたでしょうか。用語と共に、電動一輪車の特徴についても理解して頂けたかと思います。
電動一輪車の特性を知り、安全に乗ることで、より一層楽しいライドにしたいものですね。
以上、Alai Smi-yo-Theeでした。
コメント
こんにちわ
初めましてyoutubeで新井さんの動画を見て電動一輪車を始めました。
InMotion(V5F)をヤフオクで購入し一通り乗れるようになったのですが
先日、子供と練習していた際、突然、車両が水平状態ではなくなりました。
若干前のめりの状態です。
電源スイッチON.OFFの際にも音もならなくなり、アプリでチルト調整しても
動かすと前のめりの状態になり、止まるとアプリで設定した状態に戻るといった感じです。
子供もだいぶ乗れるようになってきたので、何とか修理したいのですが、こういう症状だとコントロールボード不良なんでしょうか?
自分なりにネットで検索しましたがよくわからずコメントさせてもらいました。
アドバイス頂けないでしょうか? 宜しくお願いします。
コメントいただきありがとうございます。
inmotion V5Fのアプリには”Diagnose”という車体を診断する機能があり、診断を行えばどの個所に異常があるか判別できるかもしれません。
一度お試しください。
また、症状的にもコントロールボードに何らかの異常がある可能性がありますので、交換についてもご検討いただければと思います。
コントロールボードは以下などで購入が可能です。
https://s.click.aliexpress.com/e/_AmWYmf
分解動画
https://www.youtube.com/watch?v=-vO0Mln_HV0&list=PLC5AsBFMdyy0JCWYrvt7XmLpaYnc2nJjA&index=2
ご参考になれば幸いです。
おはようございます。
早速のレス有難うございます。
アプリでの診断では問題なしと出ていたので
昨日、興味本位もあって分解してみました。
ただ、分解して組み上げただけですが… 当然ながら直りませんでした。
モーションセンサーはボード一体型になっているのでしょうか?
コントロールボードは教えていただいたサイトで注文してみます。
誰にも相談できず、困っていたのでアドバイス励みになりました。
有難うございます。
今後も何かあれば、知恵をお貸しください。
youtubeの活動、頑張ってください!!